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作者の歩みと制作時に想う事

花アイコン修行時代

長くイギリスに在住した知人に、私が内弟子として彫金を習った事が理解出来ないと言われた事がある。イギリスだったら長時間の労働と訴えられるところだと話していました。

アトリエ工具)

わが師ジミー西村も内弟子として日本、ヨーロッパと追従し彫金を習ったそうです。その間先生の身の回り一切、今までやった事もない洗濯もしたと聞きました。

内弟子として一日の殆どを師と共にし、仕事を直接見る機会と指導を受け、沢山の体験を聞き、大勢の方に引き合わせて貰いました。伝統的な工芸や芸能など様々な分野で研鑚を積まれる方々も、内弟子という形の中で師との濃密な時間を過ごすのだと思います。内弟子とは仕事の就労規則外にある大事な時と場、人育てだと感じています。

最後まで師と共に過ごしましたが、独り立ちを許されていないのでいまだ内弟子のままです。一人で切り拓く才能のある方を羨ましく思いますが、私は師を持つことができて幸せでした。

 

師はスペイン系アメリカ人のジミー・ミッチェル氏が関西の大学で社会学を教えていた時に出会ったそうです。自宅に行くと金属や道具のガラクタが沢山あり、それが彫金を習うきっかけになったと話していました。

ジミー西村

ジミー・ミッチェル先生は自作品を売る必要がなく、お弟子さんに教えるのが好きだったみたいです。イタリアで活動しローマ市庁舎に作品があると聞きました。先生が94歳で亡くなるまで一緒だったので、師ジミー西村のヨーロッパ生活も長くなりました。

ヨーロッパに居住するつもりでいたのにお父様の訃報で帰る事になり、イタリアに自身のお弟子さん4人を残しての帰国だったそうです。

ヨーロッパ各地を廻ったけれど一番好きな国はイタリアで、日本のように伝統的な手工芸など徒弟制度で引継がれて行く国柄が、肌に合ったようです。

            

師は現在のように海外旅行が当たり前ではない時代に渡欧し、彫金制作の他にドイツで店舗設計のマイスターの資格を取った。色々の体験をした師はカリスマ性を持った人であった。

ジミー西村作品

師に遠く及ばない私であるが、感性について考える事がある。国立新美術館で展示された、師の最晩年に創られた作品の前で涙ぐむ人がいた。作品で与える感性は無理でも、受け取る感性を持てるか? 私はあの涙する方の感性に至ることができるか? いつも自問している。

感性の問題に通じるのか、どちらの絵が好きか選ばされた事が何度かあった。私が選ぶと先生も同じものを選ぶ。今でもそれは不思議に思っている。

私は絵を見る人に、絵のなかで遊んでほしいと思っている。絵には形によるリズムがあり、色によるハーモニーがある。実際の風景と同じように、近景と遠景の景色は異なるはずである。私は常々、絵のなかで人が遊べる箇所を作りたいと思っている。

ジミー佐藤作品

私の絵は銅板のレリーフなので、平面でありながら立体的な表現をしなければならない。光の移り変わりによって絵も変化する。平面の画とちがって、薄暗いところで見ても絵に表情が表れなければならない。

そのためには、ハイライトと影の付け方に常に工夫を求められる。


花アイコン 作品に想う

帰れない時

過去には常に戻ることはない。私たちが今いる空間には、過去が透明な地層のように積み重なっている。砂のように堆積するそれには、生物の痕跡や、過去に降った雨の名残りなどがしおりのように挟まっている。自分が生きている空間にも、さまざまな層があったのだろう。

そう思うと、今自分がここにいることが不思議に思えてくる。が、それも地層の砂に押し流されて、刻一刻と私の手が届かない過去になって行く。

ダイナソー

ナショナル・ジオグラフィックのサイトで、恐竜の脳の化石が発見されたというニュースを見た。脳が化石となって残るのは珍しいことだという。

この頭はティラノザウルス・レックスの頭部である。それでは、ティラノザウルスの胃の大きさはどのくらいあったのだろう。

恐竜に脳があったのなら、消化器官もあったはずである。身体の構造が恐竜から人類に至るまで同じだというところに、われわれと太古とのつながりを感じる。

作品 来世の記憶

サウダージというブラジルの言葉がある。決して叶わないことに対するあこがれというような意味だが、私は、現世では叶わなかった願いごとは来世に持ち越され、いつかはかならず叶うのだろうと思う。

人類が月に行くまえにどれだけの人が月に行きたいという願い事をしながら死んでいったことだろう。

その願い事が何代にもわたって持ち越され、1969年に現実となったのだ。私は月に行ったあとの生まれなので、1969年の出来事をリアルに体験することはなかったが、いままで叶わない願い事をしてきた先人たちの熱意を感じて、気圧されるような気分になることがある。

作品 らせんの進化

物事は正・反・合とらせんを描いて進化していく。正というある事物に反する意見が出てきたとき、それらを統合して新しい意見ができる。新しい正はまた反する意見に出会い、それを解決する新しい合ができる。

その繰り返しである。意見はらせんを描きながら上へ上へと昇っていく。

アンモナイトも最初は正しいらせんを描いて進化していたが、ある日そのらせんに異常が生じた。異常なアンモナイトはねじれてもがき苦しむような形になっていたり、らせんの巻きが外れてドリル状になっていたりする。進化の爛熟がこのような異常なアンモナイトを生むのだが、物事はかならずしも正しいらせんの軌道を描いて進化していくわけではないのだということを考えさせられる。

作品 いっかくじゅう座

ハッブル宇宙望遠鏡のいっかくじゅう座の写真は、金色の雲のなかにルビーのかけらが煌めいているようで美しい。

実物はハッブル望遠鏡のサイトのライブラリーにあるので見てほしいのだが、この作品は写真からの想像で描いた。

作品 まどろみ/夜想

私が彫金を始めた年の絵で、飼っていた猫をモデルにした作品である。師からはありのままの姿ではなく、人に考えさせるように打てと評された思い出がある

sakuhin8.jpg(20446 byte) 飼い猫は神経質で気難しい、でも人に気を遣ってくれる友達だった。これは猫がまだ若かったときの横顔だが、私は猫の性格が出ているところが気に入っている。

※まどろみと夜想は一セットなので、つづけてご覧ください。

作品 ユーパキディスカス

アンモナイトの日本での主な産地は北海道と福島県である。東京の国立科学博物館のアンモナイトコレクションも北海道産が多かった。

日本は化石などの発掘に適さない土地であるが、化石の発見が多いのは、休日などに化石を発掘する一般人が多いからだそうである。

私もアンモナイトのコレクションを見に北海道の三笠市立博物館に行きたいと常々思っているのだが、叶わずにいる。日本で化石研究を盛り上げている一般人の方々の列に、私もついて行きたいと思っている。



花アイコン プロフィール

ジミー佐藤

1972年福岡県生 静岡県在住
武蔵野美術大学短期大学部卒
彫金家ジミー西村氏に師事
現在第一美術協会工芸部評議員

略歴
2003年 第一美術展 初入選
2005年 第一美術展 一般優秀賞 「安らぎ」
2010年 第一美術展 準会員優秀賞 「春の気配」
2010年 第一美術協会 工芸部 正会員
2012年 第一美術湘南支部展 優秀賞 「a dinosaur」
2014年 第一美術展 青山熊治賞 「来世の記憶」
2016年 第一美術湘南支部展 神奈川新聞社賞 「帰れない時」
2017年 第一美術展 会員優秀賞 「太古との出会い」
2018年 第一美術湘南支部展 優秀賞 「太古のさえずり」
2019年 第一美術協会 工芸部 評議員
2021年 第43回湘南支部展 第一美術協会本部賞 「情熱」

花アイコン小品 卓上アート  saleアイコン

アート活動をする私の主題は古代生物です。

「あなたの絵はある程度、重厚感があっていいんだよね」 デパートの外商部の方がある社長さんに紹介してくれました。

その時社長さんは「以前と違って社長室や応接室が無いんだよね。ご覧の通り広いワンフロアで社員と一緒だから」と笑っていたそうです。

確かに現在は、映画やドラマの設定のような画一的なアートの使い方ではなくなっています。それでも世の中は多様に変化します。
遺跡や化石発掘が好きな方は一見地味な趣味と他の人に言われるでしょうが、人一倍ロマンを感じ、思いも深化しているのではないでしょうか。

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そんな方々にご自身の楽しみとして、あるいは発展して個人ギャラリーを開いた方に、作品を飾っていただきたいです。20号の作品が多いです。20号の作品は10キロ以上の重さがありますので、壁のしっかりした所、玄関などが似合います。写真は私のアトリエですが、マントルピース風の棚の上に飾っています。

ご質問、ご感想どんな事でも結構ですので、メールフォームでお問い合わせください。

saleアイコン写真は拡大できます。

作品 アプロテキサニテス1(木)

アンモナイトの好きな方が、卓上に立てかけて楽しむ小品です。大きさはL判の 89×127 や サムホール 227×158、6号 410×318 などです。お持ちのアンモナイトは撫でて楽しむと欠ける心配がありますが、これは金属なので、触っても撫でても大丈夫です。

作品 アナゴードリセラス1(玉虫)

小ぶりな作品ですが、壁に掛けても夜の照明などに照らされると独自の存在感を出します。

価格はサムホールで2万~3万円です。
メールフォームより気軽にお問い合わせください。

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作品 夜想

我が家の猫は長生きで、一昨年19歳で亡くなりました。あと2か月で二十歳だったのが今でも残念です。

右の作品は私が初期の頃に家の猫をモデルにして創ったものです。彫金作品として見ると、表情や身体の柔らかさが生き物として感じられるのです。
お申込みがあれば、同居家族への愛情を込めたペット作品の制作を承ります。

写真や性格の特徴、しぐさなどメールで送っていただければ心を込めて制作いたします。制作者自身、毎日先生のお宅の犬2匹の散歩がお仕事だったので動物好きです。価格は実際の生き物ですから、表現が難しく、小品1点5~8万円を想定しています。勿論オリジナルの一点ものです。
メールフォームより気軽にお問い合わせください。

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作品 バラ2

重い銅板に向かって作業をしていますが、女性らしい、心が安らぐものも創りたいと思っています。

肩の力を抜くにはお花などが最適です。 私自身が季節の花のことを考えるとリラックスします。

作品 ガクアジサイ

忙しい現代の生活の中で、潤いと、少しだけアートの要素がある花作品も良いものだと思います。

今後少しづつ作品を増やして行く予定です。花の作品の大きさはF6号 410×318を考えています。壁に掛けて楽しめるものを制作いたします。
価格は1点6万円~10万円です。メールフォームよりお問い合わせください。

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お知らせ

第92回 第一美術展


出品 工芸
作品名 「前世の夢」
   



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横浜  山手イタリア山庭園前
ArtGallery  OWL
アートギャラリー アウル


オフィシャルWebサイト
https://gallery-owl-yamate.com
Twitter
https://twitter.com/ArtgalleryOwl

〒231-0868
神奈川県横浜市中区石川町1-54-5
Tell   090-8566-8266




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Video

アトリエ風景


恐竜博 2019